p.8
でもあえて凡庸な一般論を言わせてもらえるなら、我々の不完全な人生には、むだなことだっていくぶんは必要なのだ。もし不完全な人生からすべてのむだが消えてしまったら、それは不完全でさえなくなってしまう。
p.64
ぼくはまだ若かったから、その手のカラフルな事件は人生の中でしばしば起こるものなのだろうと思った。そうではないことに気づいたのは、もっとあとになってからだ。
p.65
「注意深くなる、というのが話のポイントだよ、たぶん」とぼくは言った。「最初からあうだこうだとものごとを決めつけずに、状況に応じて素直に耳を澄ませること、心と頭をいつもオープンにしておくこと」
p.167
ソファに戻り、音楽が午後の光の中に書き出す小世界に心を沈めながら、ブラームスを美しく弾くことができたらどんなに素晴らしいだろうとミュウは考えた。