母音で愛を語りましょう

私をとりまく、ぐるりのこと。

『午後の曳航』三島由紀夫

p.97

他人の感情と他人の思い出のほうが、自分の存在よりもずっと重要だと感じることの、この悩ましい甘い自己放棄の裡に、竜二は一刻も早く姿を消してしまいたかった。