母音で愛を語りましょう

私をとりまく、ぐるりのこと。

『7月24日通り』吉田修一

街に理想を重ねるように。

何も知らないから、想像できるように。

あるゆる人たちに、自分のイメージを重ねている。

 

だからこそ、逆もあるね。

あらゆる人たちのイメージを自分に重ねる。

それで飛び込めるときがある。

なかった勇気が湧いてくることがある。

 

章立ての仕掛けというか伏線というかは

本当にお洒落だけど、

そのお洒落さ以上に泥臭さもあって、

その平衡がたまらなかった。

 

〜〜〜

 

p.99

二人の会話がどれくらい周囲に聞こえていたのか分からない。騒がしい店だったので、その音にかき消されていたのかもしれない。ただ、安藤の声は一言一句、私に聞こえた。聞こえたからこそ、勇気をふり絞った自分が不憫で、いい気になって撒き散らした自分の言葉を、床を這ってでも拾い集めたかった。