母音で愛を語りましょう

私をとりまく、ぐるりのこと。

『まとまらない言葉を生きる』荒井裕樹

p.6

「言葉が壊される」というのは、ひとつには、人の尊厳を傷つけるような言葉が発せられること、そうした言葉が生活圏にまぎれ込んでいることへの怖れやためらいの感覚が薄くなってきた、ということだ。

 

p.24

ハラスメントというのは「個人的な問題」だと思われがちだけど、本当は会社とか組織の在り方が問われる「社会的な問題」だ。その「社会的な問題」に個人が直面しているのであって、ハラスメントで傷つけられることは「個人的な問題」なんかじゃない。

 

p.42

たくさん「ある言葉」というのは目立つから、すぐに気がつきやすい。対して、「ない言葉」は見つけにくい。そもそも「ない」のだから、気がつきにくいのは当たり前だ。

でも、そうした「ない」ものに想像力を働かせることも必要だ。

 

p.56

うまく表現するのがむずかしいけど、臨床の現場では、「その人が『生きて在ること』への畏敬の念」みたいなものが必要なときがあって、それがないと回復への歯車自体が動き出さないことがある。

 

p.58

ぼく自身も経験しているから、よくわかる。悩みって、強引に解決を目指しても解決しない。むしろ、悩んでいること自体を認めてもらえるだけで、楽になれることも多い。

 

p.124

そんなことをさせないために、ムードに左右されないきちんとした制度を整えなければならない。ムードというのは、マジョリティにとっては空気みたいなものだけれど、マイノリティにとっては檻みたいなもの。